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◆ ◆ ◆
数ヶ月後、俺は一人で北海道に来ていた。
シスターには、やめた方が良いと言われたのだが、どうしても俺にはやりたいことがあったのだ。
目的地に着いたのは夕方の五時、辺りは既に真っ暗だった。
雪がコンコンと降る中、一軒だけ灯りがついた家がある。
それが俺が探していた場所だ。
寒さで悴(かじか)んだ指で呼び鈴を鳴らす。
直ぐに引き戸から頑固そうな老人が姿を現した。
他には誰も居ないようだ。
覚悟はしていたが、挨拶をして話を始めた途端に「そんな奴、知らん!」と怒鳴られた。
ここは魔窟の母親の実家なのだ。
父方の両親は既に他界しており、母方の母親も既に他界している。
もう、魔窟の親族は、この爺さんしかいないのだ。
俺は、この爺さんが頑なに魔窟のことを嫌う理由を知っている。
魔窟の両親が勝手に駆け落ちしてしまったからだ。
この爺さんだけではなく、父方の両親にも母方の母親にも二人は縁を切られていたらしい。
だから、魔窟はシスターのところに行ったのだ。
「お願いします!これで本当に最後にしますから!宗介、凄く、凄く、苦しんでるんです!お願いします!」
望みはある。
何度、怒鳴られようとも、塩を頭からぶっかけられようとも、俺は頭を深く下げたまま玄関から退くことは無かった───────。
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