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ジンガイは今日もニヤリと笑う
「どうして! どうして! どうして!」
どうしてあの男が!? 僕は裏切られたのか!?
夜、住宅街。
独りそう叫んだのは僕だった。
「憎い憎い憎い!」
胸からドロリと溢れた感情が僕の口から漏れ出す。
「ニクイニクイニクイ!」
止まることを知らない憎しみが身体を包み込む。
身体が燃えるようだ、身体が凍えるようだ。
「ニグゥイヌィグィニグウィ!」
路上にあるミラーに映ったオレ。身体が黒い毛で覆われ、腕が肥大化。
異形、怪物、人外だった。
だがそれでもこの感情は、裏切られたことに対する憎しみは止まらない、溢れ出す。
「ブグァゲルナァ゛!」
ろくな発音もできなかった。何せ俺は“人外”。
怒り、憎しみに任せて腕を地面に叩きつけた。
ベコッという音。
アスファルトが捲れ上がった。
あぁ、俺は人外なのだ。
ならば、それならば。
殺してやる。この町の人間を。殺して、殺して、殺して。
「ヴゥボァァァァァァ!!」
「おぉ、いたいた」
オレの、人外の叫び声の中、凛と響く声が背後から。
振り向く。
電柱の上に佇む1人の男。黒いスーツをだらしなく着ている。ブレザーが風にはためいていた。
こいつが1番だ。
こいつを1番に殺す。
「君はどうして人外になったのかな~?」
飄々とした口調でオレに話しかける男を無視し、そいつのいる電柱を殴り、折った。
轟音と共に崩れ去り、土煙が。
死んだ、死んだ、死んだ。
オレが殺したんだ、殺したんだ、殺した。
最高だ、最高に気持ち良い、あぁもっともっともっと。
人ヲ殺シタイ。
「ウ゛ブァァァァグァ!」
「は~い。スト~ップ」
その言葉と共に晴れた土煙。ビュウと吹き付けた風はどこか冷たかった。
男。
「え~と、君は人外だっけ?」
黒いスーツの男。
「俺もジンガイなの」
死んだはずの男。
「けどね、君と違ってジンガイ」
いつの間にか右手に黒い鎌を持っている。
「そ、“神外”なんだ~」
そう言いながら、男は右手の鎌をオレへと降り下ろした。
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