3日目、水曜日

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 神谷さんは極度の甘党のようだ。練乳味噌ラーメンもそうだが、おやつに残りのケーキを4つも食べてしまった。残り1つは俺。  今度こそ彼女に触れたいって思ったのに、上司に呼ばれて泣く泣く離れた。  翌日の午後。彼女はパソコンと向き合って熱心にキーボードをカタカタ。見事なブラインドタッチだ。 「これ、連載中のじゃないんですね。新作?恋愛小説ですか?」 「うん、純愛の。私のはただ、頭に浮かぶ妄想を文字にしてるだけだから。ふふふっふふっ……」  変な笑い方。今日は髪をポニーテールにして気合十分。うなじが綺麗だ。たまにニヤニヤしながらずっとキーボードを叩き続けている。  俺は昼飯を済ませてから来たけど、彼女は執筆に没頭しすぎてあやうく昼飯を食べ損ねるところだった。  俺が声をかけなければ食べないままだったな。急きょコンビニで買った栄養補助食品でも喜んで食べてくれた。 「この女の子、ずっと片思いなんですか?」 「それは内緒。世の中の女の子は皆、大きな秘密があるのよ。そう…………私、みたいにね」  隣に座って執筆の様子を見させてもらっているけど、彼女は悲しげな顔でそう言った。主人公の女の子は片思いのまま、ずっと告白できないでいる。少し前の俺みたいだ。  女の子なんてわからない。特に彼女は何を考えているのか、全然わからない。  彼女も何か大きな秘密があるのか。それが何なのか、知りたいがとても聞く勇気がない。だって神谷さん、手を止めて遠くを見つめて溜め息を1つ。  その横顔があまりにも切なくて、俺はスッと腕を伸ばした。 「えっ?」 「隠されるのは嫌だけど、1つくらい秘密があった方が可愛いです」  俺の左手は、彼女の形のいい頭を撫でた。驚いて目を見開いた彼女はしかし、頬を赤く染めて「ありがと」とはにかむ。  ねぇ、どうしてそんなにも悲しい顔をするんですか?
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