4日目、木曜日

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「立花君、今週は毎日来るんだね。驚きだなぁ」  翌日。今日の神谷さんは機嫌が悪い?気分転換がしたいと言って帽子を目深にかぶる彼女は俺を連れ出し、賑やかな街を歩く。 「セブ……神谷さんをもっとよく知りたいので。本音を言えば、少しでも長く一緒にいたいんです」 「あぁ、恋人だからだね。立花君、音楽は好き?」  さりげなく周りの人達を眺めながらどんどん歩く彼女は、俺の返事を待たずにCDショップへ。  ずっと仏頂面、というかほぼ無表情から変わらない。けれど視聴ブースでヘッドホンをかぶり今人気の曲を聞いている彼女は、上機嫌。  目を閉じ少し体を揺らしてリズムをとって、鼻歌も歌ったりなんかして楽しそう。 「これ、オススメの曲だから聞いてよ。街中で流れてるのを聞くだけじゃわからない。1人でじっくり聞いてみてようやく理解できる、深い曲だよ」 「あ、はい、ありがとうございます。帰ったら早速聞いてみますね」  すすめられて買ったCDのアーティストはshionという、最近若い男女に人気の顔見せNGの女性。  名前と代表作は俺も知っているけど、そんなに興味はない。神谷さんはshionのファンなのか?覚えておこう。  というかこの状況って、もしかしてデート!?いやいや、俺は仕事中なわけだし、彼女だって良いアイデアが出るように気分転換で来てるんだし。  ……でも、周りから見ればデートだよなぁ。 「付き合うまで神谷さんは、1人でこうやって気分転換を?俺が一緒で迷惑じゃないですか?」 「んえ?あっ!い、いや……全然、迷惑じゃないから。私の顔が暗いから?だったらごめん、これが私の性格……の、1つみたいなものだから」  今日はたまに目が合うと笑ってくれるけど、何だかぎこちない。俺に気を使ってるのかと思ったんだけど。  性格の1つみたいなものって何だ?付き合い始めてから、どんどん神谷さんがわからなくなる一方で。  でもちょっと、面白いかも。
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