俺の彼女です

2/2
前へ
/25ページ
次へ
 俺には恋人がいる。2つ年上の可愛い彼女。ずっと片思いだったけれど、思い切って告白してやっと昨日晴れて恋人に。  彼女の名前は神谷奈々緒さん。25歳で、ライトノベルを中心に書いているSEVENという名前で活躍している小説家さん。そこそこ本が売れてます。  俺、立花透琉23歳はとある出版社の編集部所属。そう、担当しているのは彼女のSEVEN。  元々俺達は某大学の先輩後輩で、小説サークルで交流があったくらいなんだけど、社会人になってからは会うことがなかった。  初めて担当作家さんを持つことになって先に名前だけ聞いたんだけど、そういえば知り合いに同じ名前の人がいたなぁってくらいにしか思わなかったんだ。  でも、いざ俺の指導係の先輩と一緒に彼女の家を訪問してビックリ。超ビックリ。  彼女もすぐに気づいて玄関で漫画みたいに「あーっ!!?」って指を差し合ったんだ。編集の先輩は「世界は狭いな」なんて笑っていたよ。  リビングに通されて気軽に自己紹介をして、もちろん仕事の話もして盛り上がった。だけど俺はその時、何よりも彼女の印象の違いに動揺していたんだ。  大学生の時は彼女はいつも綺麗な服を着ていて、でも着飾りすぎないとっても丁度良い人だった。  性格も優しくて明るくて、誰にでも平等に接してくれるまさに聖母のような素晴らしい人だったんだ。  でも訪問した時の彼女と来たら……仕事中だったらしい。清楚なワンピースまではいい。腰まであるエンジ色のストレートヘアの前髪を黄色い大きなヘアピンで留め、足にはスリッパの代わりにボロボロの草履。  しかもかなりの面倒くさがりやらしい。落ちていたクッションを上手く蹴り飛ばしてソファーに上げ、談笑中は椅子に座ったままものすっごい頑張って手を伸ばしても届かなかったティッシュをリモコンで手繰り寄せた。  俺の中にいた彼女の偶像が音を立てて崩れ落ちた感じ。いや、これが本当の彼女なんだろうけど。  その日から俺は仕事上、ほぼ毎日彼女の家へ行くようになった。そのうちに惹かれていって、1年くらい片思い。  とてもじゃないけど仕事に差し支えないとは言えなくなってきたから、昨日の帰りに手を握って愛を告げた。  彼女は涙を流して喜んでくれたよ。夢みたいだって、運命だねって笑いながら、初めてのキスを交わした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加