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――その、翌日の今日。ある月曜日。連載中の彼女の原稿をもらいにお宅訪問。休憩時間にちょっとだけ、イチャつく予定。
恋人なんだから少しくらい、いいでしょ。
「…………あぁ、やっぱり俺、SEVENの作品が好きです。言葉選びが面白いし言い回しが綺麗で、話自体もまっすぐだからしっかり理解しながらサクサク読める」
今日預かる原稿を読ませてもらっている間、彼女は続きをパソコンに打ち込んでいた。
俺が読み終わって原稿を鞄にしまうと、彼女も手を止めて顔を向けてくれる。そろそろ休憩かな。
俺は入社する前からSEVENの大ファンだから、彼女の特徴や良い味を出す変な癖がよくわかる。担当になったのも、彼女の作品をよく理解しているからだと思う。
世の中に出る前、1番に読めるのは担当の特権。大ファンとしては鼻血が出るほどに嬉しい。が、しかし俺は編集者。冷静に仕事として読むのが義務。
「文章だけでも十分情景は思い浮かべられますが、漫画やアニメへの希望はないんですか?」
「私はただ、この子達の物語をこの子達に代わって文章にして世の中に発表しているだけだもの。代弁しているの。漫画もアニメもドラマCDも憧れるけど、機会があればでいいの」
控えめだなぁ、と見つめていると彼女の手がずっと動いていることに気がついた。
苦笑する彼女は手元も見ないで、机の上に広げられた資料を整えてスタンドにしまう。糖分補給用のチョコの包み紙を捨ててコップの水滴を綺麗に拭き取る。
え、手際が良い?面倒くさがりで不器用な彼女が?
失礼だけど、そういう人なんだ。なのに綺麗に片づけ終わって「休憩しよっか」と立ち上がり、キッチンに向かいお湯を沸かす。
締め切りも押してないし、余裕があるからなのかなぁ?少しして、彼女は湯気が立ち上るマグカップを2つ持ってきた。ま、いっか。
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