第1章

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「一時私も勝手に調べてたことがあって。鬼塚家っていえば、そういう世界では有名な退魔師の一族らしいわ」 「そういう世界…?」 「要するに除霊師とか呪い師とか…そういう非現実的なそれらのことよ」 なるほど。成実が決して信じない世界のことか。忌々しげにそれらのワードを口にする成実に苦笑する。 しかしということは、鬼塚宗一郎という男は案外ちゃんとした経歴を持っているということになる。彼がインチキペテン師である可能性をまだ捨てきれずにいた瑞樹にとって、その話は目から鱗な事実だった。 (実は凄い奴なのか…?) 瑞樹がそんなことを考えていると、成実がパソコンの画面に向かいながらなんとも言えない声を上げた。 …というか、ネット繋がってるのかここ。 「どうかしたんですか」 「いやね、ここのお祭りについてずっと調べてるんだけど…なかなかそれらしいのが当たらなくて。けどこれ、見て」 画面を向けられ、瑞樹は覗き込むように確認した。そこに書かれている見出しを声に出して読み上げる。 「…"人魚の島に伝わる恐ろしい伝承、その真相とは"…?」 その記事には、どこの島とははっきり記載されていないが、著者が実際にその地に訪れレポートしたような内容になっていた。 著者はその島の祭りについて記事にしたかったようだが、祭りには参加できず遠くで眺めることも叶わないまま追い返されたそうだ。その内容は一切謎で、関係者以外の立ち入りは禁止されているのだという。 そのことについて、島の人間は皆不老不死であるだとか、豚の肉を人魚の肉と偽って売買しているのではないかなど、著者の推測が書かれていた。
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