第1章

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何の躊躇いもないその様子に変に感心しながら、瑞樹ももう一度掬ってみる。 …肉だ。 ……何の肉だこれ。 さっき聞いた成実の話もあって、不信感が拭いきれない。が、瑞樹はそっと一口食べてみた。 ………うまい。 「お口に合って何よりです」 黙々と食べ出した一行に、村長が微笑む。 「お食事中でのお話になってしまい大変恐縮なのですが、私もまた祭りの準備に出向かなくてはなりませんので…この後の段取りについて少しご説明させていただきますね」 まず、海岸で集まりそこで村長から初めの挨拶がある。その時に鬼塚のことは紹介するから、できるだけ舞台の近くにいてほしいとのことだった。 「その後は山の上の社を目指します。そこで今年の巫女を迎えます。巫女を乗せた神輿はそのまま祠に向かいますが、他の者はそこで解散します」 鬼塚達もそこで屋敷に帰って良いということらしい。 「どうか楽しんでくだされ」 そう言って村長は話を結んだ。 今の説明を聞く限り、やはり特別なことは何もしなくて良さそうだ。 「楽しみにしてますよ。しかし、お孫さんは?先程から姿が見えませんが」 「そういえば!もしかして今年の巫女って…」 鬼塚と成実が尋ねれば、村長は苦笑して首を横に振った。 「いえ、あれは…あの子は部屋で休んでますよ。巫女なんてとんでもない、そんな器じゃありません。さっきはあの子の手前ああ言いましたが、祭りには参加させられません。外の空気が身体に障ります故」
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