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そうして、その場に集まった一同は神輿が山を下って行くのを見送った。
神輿の姿が見えなくなると、周りにざわざわと喧騒が返ってくる。それが異空間から現実に戻ってきたような感覚にさせた。
「これで終わり…?」
成実もきょろきょろと周りを見回しながら疑問を口にする。
先程の狂信的かつ熱狂的な雰囲気はそこにはもうなかった。
祭りの後の静けさとはこのことだろうか。
人々は、何事もなかったかのように徐に来た道を引き返していく。その様子はまるで、止まっていた時が動き出したかのような、かけられていた催眠術が解かれかのような、そんな感じで。
あっけないといえばあっけない。
「ま、いいんじゃねぇの。俺らも帰るぞ」
鬼塚は気怠げに頭を掻き毟りながら、ぞろぞろと引いていく人波の後について行っていた。
瑞樹と成実も腑に落ちないながら、その後を追う。
「ていうかこれ、先生が呼ばれた意味ありました?」
「何でもいいだろ別に。金が入るなら」
「でもこれじゃあ、先生みたいなのをわざわざお金払って呼んだ意味がまるでわからなくないですか」
「みたいなのってどういう意味だコラ」
「だって、いったい何の得があって…何か勘違いしてたとしか」
「お前それ以上言ってみろよ、わかってんだろーな」
心底理解できないというように唸る成実に、瑞樹も内心首をひねった。
この一連の出来事に、いったい何の意味があったのだろうかと。
「…あんたは、妙だとは思わないのか」
思わず口をついて出た言葉に、鬼塚は足を止めた。
そして振り返って、その無表情な瞳を瑞樹に向けた。
黒い瞳に、満月の光が反射した。
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