第1章

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「な…ぜ、…ナ、ゼ……」 十和子は身を震わせながら、何かに耐えるように自身を抱き締めた。 「十和子…!」 そこに、第三者の声が割り込んだ。 鬼塚と瑞樹が揃って声の方へ顔を向けると、そこには手を簡単に縄で縛られた村長がいた。その後ろには成実が銃を手に立っている。 「十和子、もうやめなさい…!」 悲痛な祖父の声を聞いて、十和子の目が見開かれる。しかしそれはすぐに憎悪に塗り替えられた。 「あなたが…あなたが喋ったの…?」 「十和子、」 「あなたが、私を裏切るの!?」 そう叫んだかと思えば、彼女はそのまま蹲るように身を縮めた。 「ぅ、ア…ア、アア……ッ」 メキメキと骨の軋むような音と共に、十和子の皮膚に鱗が浮かび上がる。 「あれは…」 「下がってろ」 息を呑む瑞樹を背に、鬼塚が鋭く言った。 成実も汗を滲ませながら銃を構えた。 悶え苦しむ十和子の名を、村長だけが呼び続ける。 「ウグッ…ガッ…ア、ア…アアアアアアッ!!!」 「くっ!」 苦痛に任せて十和子が鬼塚に襲いかかる。それをかわしながら、鬼塚は瑞樹の身体を突き飛ばした。 「業火!」 鬼塚が素早く印を結んで術を発動させ、炎が十和子の身体を覆った。成実も岩陰から銃で援護する。しかし、いずれもまるで効かない。 突き飛ばされた瑞樹は茫然とその様子を見ていたが、慌てて起き上がり、同じく離れた所で膝をついて茫然としている村長の側へと駆け寄った。
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