第1章

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ミーンミンミンミンミンミン 「あっぢぃ~…」 「あづいぃ…」 「……」 ジョージョワジョワジョワジョワ 「だあああああああ!!セミうっせ!!マジうっせ!!」 「もーっ!先生の方がうるさいですよ!ていうか今時エアコンないとかどうかしてますよ!」 「しゃーねぇだろ金かかんだよ!」 「……」 あつい、という瑞樹の小さな呟きはいつもの喧騒に呑まれてかき消された。 瑞樹斗真(19)、今まさにバイト先で干からびて死にそうな目に遭っている。 大学が休みに入ったので、とりあえずバイト先の事務所に顔を出してみたのだが、これだったら大学の図書館で涼んでいた方が幾分もマシであった。 事務所と言っても古く小さなビルのワンフロア、しかも法律事務所や探偵事務所なんかじゃない。 鬼塚払い屋事務所。なんとも胡散臭い響き。 仕事内容はその名前の通りお祓いなんかをやっているそうだが、その経営者や従業員はその響きの胡散臭さの通り曲者揃い、変人の巣窟であった。 とは言え依頼がなくては基本的に仕事はなく、今日も今日とて特に何もすることがない状態である。…というか、この暑さの中で生命を維持するのに各々必死だ。 「こないだの報酬はどうしちゃったんですか!あれでエアコン買うって言ってたじゃないですか!」 「知らねぇよ。そんなものいつの間にか消えて無くなってたよ」 「どうせ全部パチンコに使ったんでしょ!」 「ちげぇよ。俺は人生の賭けに出たんだ…それで負けた。悔しいが、運命の女神だけはこの俺にもオトせないらしい」 「やっぱりパチンコじゃないですかー!!」 「ちげぇよ。お馬さんだよ」 「どっちでも一緒です!!」 「……」
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