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その銛を突き刺して、それを引き抜いたのもまた、八魚籠國久だった。
十和子の身体がぐらりと崩れる。
そしてその引き抜いた銛を、老爺は自分自身の胸に宛てがった。
あ、と言う間も、勿論止める術もなかった。
八魚籠國久はその銛で自分の心臓を一突きにし、そのまま事切れた。
十和子の身体は地面に倒れてから何度か痙攣していたが、ついに動かなくなった。
立ち上がった鬼塚につられて、瑞樹もふらりと身を起こす。成実も銃を下ろして、立ち尽くしていた。
そこには凄惨な物語の結末だけがあった。
「…なんで、こんな…」
なんで、こんなことに。
どうすればよかったのか。
瑞樹はそう言おうとして、結局言葉は続かなかった。
そんな問いを投げかけても、どうしたって答えは見当たらないことはわかっていた。
正解なんてない。何が間違いだったのかすら、もう曖昧なのだ。
「…行くぞ」
鬼塚の声だけが平素通りに淡々と響く。
「他の村人が無事かどうか様子を見にいかねぇと。後始末も山積みだしな」
冷酷とも取れるその声色が、悪夢に呑み込まれたかのような瑞樹の精神を、しっかりした現実に引き戻してくれるようで、今だけはありがたかった。
鬼塚の呼びかけに一つ頷いて、瑞樹はふと動かぬ二人の姿を見下ろした。
十和子の皮膚からはボロボロと鱗が剥がれ落ち、それは蝋燭の光を受けてキラキラと光っていた。
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