第1章

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そして不思議な程あっさりと解放された一行は、その日の夕刻には帰路につくこととなった。 帰りの船は警察が手配してくれた。 「でもなんか、巻き込まれ損って感じじゃないですか?」 遠去かっていく島を振り返りながら、成実が言った。 「途中はどうなることかと思いましたよ」 … 「あんたは妙だと思わないのか」 祭りの終わった後、瑞樹の問いかけに鬼塚は瑞樹と成実を振り返ってこう答えた。 「…一つ、考えがある」 鬼塚はこの村の祭りの裏になんらかの策謀があるのであろうと推測していた。 その策謀に、全貌は容易には測れないが、どんな形であれ自分の存在が必要なのだろうということも読んでいた。 「奴らの狙いはわからねぇが…あのじぃさんの娘、あれからは妙な気を感じた」 「妙な気…?」 「人ならざるものの気配がした。最悪、死人が出るかもしれない」 鬼塚の口調は淡々としていて、それでいてその内容は漠然としたものだったが、事態の深刻さを呑み込み始めた瑞樹と成実は息を呑んだ。 「…どうすればいいんですか、私達」 覚悟を決めたように、成実が言った。 「今夜、あの娘が俺を誘いに来るだろう。その前にまずあの村長を吐かせる」 … そうしてだいたいの自体を把握した一行は、巫女の救出に向かい、その替え玉として瑞樹が巫女に成り代わった。 そうして昨晩の出来事に至ったのである。
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