第1章

5/38
前へ
/40ページ
次へ
「んだぁ?これ」 三人顔を付き合わせて確認した手紙には、そう書かれていた。それと交通費は負担するという旨の記されたメモと、行き方案内の地図が同封されている。 「要するに、お祭りやるから来てください、ってこと?」 「祭りィ?あれか、俗に言うフェスタボー」 「それを言うならフェスティバルです」 「バッカお前これがネイデブの発音なんだよ」 「はいはいネイティヴですねネイティヴネイティヴ」 「お前後で腹筋50回な。つかどこだよこれ?どこに来いって?」 鬼塚が地図を気怠げに広げた。鬼塚と成実のやりとりを黙って聞いていた瑞樹も、その地図を覗き込む。 「沖縄の近くの島ですかね…」 「えっ!行きたーい!先生!」 成実がはしゃいだ声をあげ、キラキラとした眼差しを鬼塚に向けた。 「行きましょうよー先生~!タダでいけるんですよ!」 「めんどくせぇ。行くならお前だけで行けよ」 「えぇ~でもだってこれ先生ありきの招待でしょ?」 「知らネェ知ったこっちゃネェ。俺は金にならネェことはやらネェ」 「なんでちょっとラップ調なんですか先生」 瑞樹が封筒に中身を仕舞っていると、中からもう一枚紙が出てきた。それを手に瑞樹は軽い気持ちで口を挟んだ。 「でも報酬は応相談…的なこと書いてありますよ。祭りのゲストってことで支払ってくれるんじゃないんです、か…」 ふと顔を上げた時の、二人の食いつきようったらなかった。瑞樹はかつて今までこんなにも欲に忠実な人間の顔を見たことはなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加