第1章

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そんなこんなで、鬼塚一行は遠路はるばるここまでやってきたのだ。 この絶海に浮かぶ孤島、周りから断絶された未知の村落へと。 「わぁ…なんか辺境の地って感じ」 成実がそう言うのも無理はない。船着き場に船が着くと、目に入るのは視界の果てまで緑だ。他には何もない。知らなければ人が住んでいるとは思いもしないだろう。 「こちらへどうぞ」 ここまで誘導してくれた漁師の男達は、さらに村のある方へと瑞樹達を案内してくれた。 「お祭りって何のお祭りなんですか?」 成実が聞くと、漁師らは自慢げに笑いにこやかにこう答えた。 「豊年祭だよ。大漁を願ってこの島をずっと守ってくれてる神様にな、歌をやったり踊りをやったりお供えを用意したりして、楽しんでもらうんさ」 「へぇ~楽しそう」 「あとは目玉の儀式があってな?今年も一人選ばれた娘が巫女の役を担うのさ」 「巫女?」 「一晩神様にお使えする大事なお勤めよ。村で一番の美人しかなれねぇ。姉ちゃんなら望みあるよ」 「キャーやだ~そんなことないですよ~!」 「お前が巫女とかその神様とやらも走って逃げ出すだろうな」 「先生どういう意味ですかそれ?」 満更でもなさそうな成実に鬼塚が水を差したところで、瑞樹は漁師の男に尋ねた。 「神様って、どんな神様なんですか?」 すると漁師らは顔を見合わせ、誇らしげに言った。 「人魚だよ」
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