今頃の時期に、思い出す

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おじいちゃんはおばあちゃんの事が大好きだった。 幼い私とふたりになると、おじいちゃんはよく「ばあちゃんみたいなばあちゃんになれよ」と笑った。 細くいくつもある笑いシワを見上げて、私は素直に「うんっ」と答える。 おじいちゃんは満足そうにうなずき返して、頭を撫でてくれた。 「ばあちゃんみたいなばあちゃんになったら、じいちゃんみたいなじいちゃんがずーっと一緒にいるからな」 おばあちゃんが大好きだったおじいちゃん。 でも、秘密をひとつだけ教えてくれた。 「本当はな、ばあちゃんの玉子焼き、それだけは、好きじゃないんだよなぁ」 「おいしいよ、甘くて」 「おかずにならんもん。だし巻きがいい」 真面目な顔で語るおじいちゃんに「じゃあだし巻き玉子つくって、っておばあちゃんに言ったらいいじゃない?」と私が言うと、おじいちゃんはまた笑った。 「それは死んでも言わないの。だってな」 玉子焼きを焼くおばあちゃんの後ろ姿は大好きなんだって、恥ずかしそうに教えてくれた。
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