11人が本棚に入れています
本棚に追加
おじいちゃんはおばあちゃんの事が大好きだった。
幼い私とふたりになると、おじいちゃんはよく「ばあちゃんみたいなばあちゃんになれよ」と笑った。
細くいくつもある笑いシワを見上げて、私は素直に「うんっ」と答える。
おじいちゃんは満足そうにうなずき返して、頭を撫でてくれた。
「ばあちゃんみたいなばあちゃんになったら、じいちゃんみたいなじいちゃんがずーっと一緒にいるからな」
おばあちゃんが大好きだったおじいちゃん。
でも、秘密をひとつだけ教えてくれた。
「本当はな、ばあちゃんの玉子焼き、それだけは、好きじゃないんだよなぁ」
「おいしいよ、甘くて」
「おかずにならんもん。だし巻きがいい」
真面目な顔で語るおじいちゃんに「じゃあだし巻き玉子つくって、っておばあちゃんに言ったらいいじゃない?」と私が言うと、おじいちゃんはまた笑った。
「それは死んでも言わないの。だってな」
玉子焼きを焼くおばあちゃんの後ろ姿は大好きなんだって、恥ずかしそうに教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!