今頃の時期に、思い出す

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結局、お互いに言わなかったんだろう。 孫の私だけが知る秘密。 「今回はねぇ、うまくできたと思うんだ」 お弁当箱にだし巻き玉子と甘い玉子焼きを詰めて。 「これ、おじいちゃんにそっくりだよね」 コジャレた雑貨屋さんで見付けた人形を、見せる。 線香の香りを吸い込み、空を見上げて、沈黙するふたりの居場所を眺める。 「私、まだまだおばあちゃんみたいな人にはなれないなぁ」 だし巻き玉子も玉子焼きも、他の料理もまだまだ。 「私、おじいちゃんみたいな人には出会えてないよー」 いつか素敵な人が現れたら、もしお互いに年をとっても一緒にいれたなら。 おじいちゃんとおばあちゃんをお手本にしていきたいなぁ。 仲のいい夫婦の、ちょっとした秘密。 *end*
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