KEN

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 俺がモモコに会ったのは仕事帰りの薄暗い電灯の下だった。  その夜は闇に染み着いたアルコールと煙草の匂いに、甘ったるい香りが混ざりあっていた。  ギラギラ瞬く2つの光は、夜明けより早く、真っ直ぐに俺に近付いて来た。 「あなた、ひとり?」  猫の誘うような甘ったるい声の響きが、暑苦しい夏の夜に何故だか心地が良かった。 「一人だよ。なんで?」 「やったっ」  小さく微笑んで、大きな瞳を細くしたモモコは、身体をくねらせたかと思うと、次の瞬間には俺の直ぐ横に立っていた。 「遊ぼう」 「何して?」 「何でもいい。楽しいことしよ」  モモコは、漫画のキャラクターみたいな細い腰に手を当て、深く開いた胸元を見せて、男心を刺激していた。  まるでずっとそうして居たように、二人は並んで歩き出す。  人懐っこい猫のようだ。それが、モモコに持った第一印象だった。  モモコは、嬉しそうに俺に腕を絡ませ微笑んだ。汗ばんだ腕は、弾む感触がした。自然な仕草と瞳で、モモコは俺の神経に触れていた。  女の好みには、けっこううるさい方だが、違和感なく入り込んでくる気安さがモモコにはあった。  
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