KEN

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 モモコは、嬉しそうに笑って、俺に話をふってくる。一方的なその態度も、今の俺には不快では無かった。  今日の俺は、きっと一人で居たくなかったのだ。数時間前の出来事が脳裏に甦り吐き気がした。  これから先に起こりうる事も想像して、不安に駆られる。  正直言うと、俺は、偶然に出会った可愛い女の子に現実逃避をしているだけだった。 「ねぇ、ねぇ、名前、教えてぇ?」 「謙、だけど」 「けん? ハリウッドの人と一緒?」  聞かれた映画俳優の顔は浮かばなかったが、俺は「あぁ」と簡単に返事をしていた。 「けんちゃん。名前かっこいい! 顔もかっこいいし~」  擦り寄せられた身体が密着して、モモコの柔らかさに、俺は立ち止まる。 「君、いくつ?」 「二十歳だよ」 「本当に遊ぶ?」  モモコは、見た目通りに豊かな胸を、俺の腕に押し付けて、離れないことを強調していた。  この街に溢れる色んな嘘はお互い様だった。俺は、加速して行くその場の現実逃避を優先していた。
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