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熱が濃く、深く、全身にまとわりつく夜だった。偶然に出会った瞳の大きな女が、そんな気持ちにさせたのだろう。
俺の横で眠るモモコは、小さく丸まって「クークー」と鳴いている。その姿は、小さなリスのようだった。
俺は、煙草をくわえながらモモコの顔を観察する。
とにかく大きな瞳が特徴的なモモコ。今は閉じているから、ギラギラした光を失っている。
少し厚ぼったい唇は、自分に向かって来る時は、蛇のように俺の身体を這ってきた。それは刺激的な攻撃力を持っていて、俺はしばらく快楽に飲まれた。
男らしく応戦したくなって、追い込めば、子猫の様に瞳を潤ませて俺を見るから、アンバランスな感覚に我を忘れて、貪るように求めていた。
俺は、煙草の煙をカーテンの隙間から零れる陽射しに大きく吐き出した。消えそうな自分を形作るために。
後からやって来る疲労感に抗えず、俺は、崩れる様に瞼を閉じる。
瞼の裏に残る残像は、色を失った気持ち悪い女の顔面。
俺は、残像を消し去るために、馬鹿みたいに頭を振って瞳をこじ開ける。
リスみたいに可愛い顔をして眠るモモコを見て安堵していた。
今なら少し眠れる。そんな気がしてまた、俺は瞳を閉じていた。
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