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閉店する間際に、携帯に連絡が入っていた。
モモコは携帯電話を持っていない。だから必然的に他の人間。
[店が終わったら会いたい ショウコ]
存在すら忘れていたと言うのが、俺の正直な気持ちだった。
いつもだったら完全に無視する輩だった。無視できない理由を知っていて、こいつはメールをしてきたと、俺は確信していた。
あえてメールには返事をしなかったが、予想通りショウコは、店の外で隠れる様にして、俺が出てくるのを待っていた。
「けんちゃん、久しぶり」
「おう」
素っ気なく歩き出す俺に、ショウコは焦って小走りに近寄ってきた。
「けんちゃん、知ってるよね? ナツが殺されたの」
ショウコは、俺の様子を伺っていたから、俺は、わざと関心が無い素振りをした。
「さっきマスターに聞いた」
「うそ。知ってたくせに」
「はあ?」
ショウコは携帯電話を出して、俺に振って見せ、切り札を取り出した。
「ナツが送ってきた写メ。けんちゃんの彼女だって、自慢したかったんだね」
いつ撮られたものか、俺には分からなかった。ベッドでナツの横に寝ている自分が酷く間抜けに見えた。
「ナツが殺された日も、会ってたんだよね?」
俺は、足を止めてショウコの方を振り返っていた。
「会うってナツは言ってた」
確かにあの夜、俺は、ナツと会う約束をしていた。
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