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そんなにここの家が嫌いだったのかと操は思い知らされたのだ。
自分もなじる相手がいなくなるのはちょっと寂しいかと少なからず思いはした。
それから修三は、皆に見送られることなく一人で戦争に行く事になった。
この時長女の沙織は母の操に言った。
「ねえ、お母ちゃんどうしてお父ちゃんのお見送りに行かないの」操は苦虫を潰したような顔をしながらいう。
「ええんよ。あの人はこの家が嫌で出ていくんやから、死にたいんよ」
暫くしてから修三が戦死したと連絡が入った。
その時の様子を見ていた人からの話だと、修三は打たれるのを覚悟で戦火の中へと自ら飛び込んでいき撃たれたと言うのだ。
修三の遺骨を持ってきてくれた人はそう言うと遺骨を操の手に手渡した。
この時の操の目にはうっすらと涙がにじんでいた。
そして、操は小さな声で「お帰りなさい」と呟いていた。
夫婦の中の事は他人には分からない。
子供達にも、本当の所は分からない。
だが、修三の戦死により多額の遺族金が入るようになりなんとか操は子供達を育てる事が出来たのだった。
おわり
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