93人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
とある会社の花形部署、営業部のオフィス。ここで私は、今日も完璧な笑顔を振り撒く。
「石森さん。このデータどこか変なんだけど、分かる?」
自分の仕事くらい自分で片付けろや。うげ、しかも複雑な資料持って来やがって。
…なんて思ったのはほんの一瞬。『良い人石森さん』はそんなこと考えちゃいけません。
にこやかな顔のまま、朝っぱらから頭をフル回転させてデータを読み解く。
「そうですね…、ここの数値が―」
データの問題点をスラスラと、分かりやすく説明してみせる。
営業部で扱う仕事内容を網羅せんばかりに、死ぬ気で頭に叩き込んだ私の根性舐めんな。
「なるほどねー。ありがとう、さっすが石森さん!」
「いえいえ、お役に立てて良かったです。」
ここで得意気な顔をしたら全てが台無し。正解は、謙虚な返事。
よし、これで今日も私への評価が上がった。ふふん、と漫画みたいな笑い方をしたくなる、そんな歪んだ充足感。
最初のコメントを投稿しよう!