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揺れる視界。衝突音。ライトの眩しい光と殴りつけるような衝撃。
急がないと。と焦る僕の意識。
痛みがやって来たのは左腕が骨折して、手術が終わった後だった。
ぼうっとする意識の中で警察官に何かを離したのは覚えている。
僕の意識が鮮明になったのは白いシーツの感触とクリーム色の壁紙、そして、病院らしい清潔感のあるカーテンの中だった。
ピッピッという機械的な音の中で僕ははっきりと自分が寺里祐樹(てらさと ゆうき)であることを思い出した。そして、焦って飛び出したところを車に轢かれたのも同時に思い出す。
他の記憶を思い出そうとした瞬間。
頭の、こめかみの所がズキリと痛む。咄嗟に右手で頭を抑えながら近くにあったナースコールを押した。
意識が鮮明になった僕は事故の状況のわりに怪我が少なかったことを医者に言われながら、同棲しているユミのことが気がかりだった。
「お見舞いとか、誰か来ましたか?」
そう看護婦に言うと、看護婦は「女性が一人来ていた増したよ」と優しく言ってくれた。
僕はホッと胸を撫で下ろす。
彼女とは確か、事故を起こす前に喧嘩してしまったんだ。衝動的に家を飛び出した僕は間抜けにも事故に遭ってしまった。
さぞかし彼女は心配しているだろう。そう思いながらも僕は退院の日を待ちわびた。
ユミは結局、入院中一度もお見舞いに来ることは無かった。と言うよりもタイミングが悪いのか洋服や本などは看護婦さん経由でもらうものの、丁度リハビリ中だったり、入浴中でいなかったりとタイミングが悪い。
そうだ、僕たちはいつもタイミングが悪い。
喧嘩の理由だってそうだ。
タイミング悪く彼女の休日と僕の休日が重ならないせいでずっとデートもできなかった。
あの日は二人でしっかり合わせてデートする予定だったのに、ユミは緊急に仕事へと行かなくてはいけなくなっていた。
その時に仕方ないよ。と言えば良かったものの。丁度、仕事のミスでイライラしていた僕にとっては、喧嘩の火種になってしまった。
子供っぽい。
今思うとそんな自分を張り倒したくもなる。
退院の日も恐らくタイミング悪く迎えには来れなかったのだろう。
僕は仕方なく一人で僕とユミの住むアパートへと急いだ。
左腕には未だにギブスが着けられている。七月のムシムシした中でこの状態というのは結構キツイ。
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