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でも、どうしたものだろう、この状況を収束させるには…… 俺の脳みそはアルコールでほぼ溺死寸前であった。とは裏腹にカラオケで目の覚めた俺は、いつの間にか聡美の手を握っていた。それだけではない『君が欲しい』などとほざいていた、勃つ自信もないくせにだ。俺は現状に対し反抗しかしない多重人格者と化しており、もう辻褄の合わない状態になっていた。
「君への愛はどこにいても語り尽くせないようだ、君の部屋に行きたい、こんな男でも入れてくれるかな?」
と俺は自分の草臥れた外観の事など忘却の彼方に追いやり、全盛期だった二〇代の頃に戻っていた。
「ええ? でも片付けてないし……」
「俺は君の排出したゴミの山に埋もれたい」
「そんなに散らかってはいないけど」
「君のそばにいたいんだ」
と本当は何も考えずに、手当たり次第に口説き文句を並べていたのだが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるようだ。『じゃあ、出る?』という事で俺は聡美とタクシーに乗り込んだ。
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