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「しかし、中島も老けたよな、髪の毛が減った分えらく年老いたな、俺より上に見える」
と俺は相変わらず、デリカシーとは親の仇のような事を言っている。
「いいですよ、どうせ大原さんより長生きする訳だし」なんて返す中島。
「あの頃は楽しかったですね」
とポツリと聡美が言った。
「楽しかったよね、綺麗で可愛い聡美ちゃんに俺はメロメロだったんだぜ」
あら? 何のスイッチかは覚えていないが、それから俺は聡美を口説きまくっていた。恐らく昔付き合っていて既に既婚者となった中島がいるのにわざわざ出て来てくれた事に対する感謝の念とフォローの為だと思うのだが、一方で酔った中島が『お前の身体が忘れられないじぇ』などと暴言を吐き始める危惧があったからかもしれない。彼女を不快にさせてはならない、ある意味、俺の正義の使命感からであったとは思うのだが。
ただ俺の悪い癖は一生懸命になると意地になってでも突き通そうとする事だった。それはまるで受けない芸人が執拗に受けを狙いネタを繰り返すのに似ていた。酒の所為に力一杯するが、何を言ったが覚えていない。
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