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その日、私は宇宙人を拾ったのです。
「いや、違う。拾わされた? いや、受け取り拒否したのについてきた? ううん、違うわ」
ふふふふふと、私は力の抜けた笑い声を立てた。
「これは、そう、・・・押し掛けられたっていうのよ」
どう見ても風船にしか見えない奴が帰り道を急ぐ私に話しかけてくるのを、ちゃんと無視していたというのに。
「ふむ。ということは、僕は押し掛け女房というわけですね」
「違うわっ、ぼけぇっ!」
「へぐぁっ!」
見事なスイングを披露した私の足により、宇宙人が吹っ飛んでいく。ああ、なのに何故なのだろう。
どんなに思いっきり蹴っても殴っても、大してダメージなど与えられないのは。
壁に激突する前にスピードがなくなっていき、そしてまた空中に漂うだけなのだ。そう、普通の風船に蹴りを入れたのと同じように。
「かつて宇宙人と言えば、様々な形を地球人は夢想していたものだけど、さすがにこれはなかった。無かったわよ・・・」
あまりの情けなさに泣きたくなる。
そう、私の部屋に居ついた宇宙人は、誰がどう見てもふわふわと漂う青いゴム風船にしか見えない姿だった。
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