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どんなに殴ろうが蹴ろうが罵ろうが、それでもしつこく私の元へ戻ってきた宇宙人。けれども、青い欠片となって降りそそいできた姿に、そんなふてぶてしさなど、もうどこにもなかった。
「う、嘘・・・。え?」
震える手を伸ばせば、私の体から剥がれない。それどころか私の肌の上で、一ケ所に集まり始めた。
「ええっ、えええーっ?」
何、こいつ。もしや自己修復機能っ!?
私は愕然とした。
(まさか、また同じ姿に戻るとか?)
呆然と見ていたら、その青い破片は丸く集まったかと思うと、一気に肌色となって違う形に変わった。
「って、何じゃこりゃあーっ」
私は叫んだ。いや、誰だって叫ぶだろう。
というのも。
そこに出来たのは私だったからだ。ただし、体長四十センチの。
「だから言ったのにぃ。僕、いいえ、こうなると私って言った方がいいんですよね? 私を割ったりするから、美香さんの姿になっちゃったじゃないですかぁ。もうっ、そんなに私のこと、愛してくれてたなんて」
「は?」
「私達、居ついた所が居心地悪かったら、またみんなで一緒に飛んでいくんですけどぉ、ご主人様に気に入られたら『逃っがさないぞぉ、こら』って割られちゃうんです。そうしたらご主人様と同じ姿になって逃げられなくなっちゃうでしょ? 美香さんったら、私のこと、そんなに・・・」
うふっと恥じらう宇宙人の姿は、どう見ても私そっくりの裸体人形である。
しかも風船の時は男の声だったのに、今では私と同じ声だ。
「ちょ、ちょっと待って。私と同じ姿って、それ、・・・変えられるのよね?」
「いいえー? そんなの変えられる筈ないじゃないですかぁ。私、死ぬまでこの姿ですけど?」
何ということだろう。私は先程までの自分を呪った。
「同じってどこまで・・・」
「ホクロの位置も歯並びも何もかもが同じですよ? 美香さんの愛する人に私を贈れば、いつだって美香さんを思い出せちゃいますねっ」
うっふーんと、宇宙人がセクシーなポーズをとってみせる。
(ああ、詰んだ)
捨てられない。絶対に捨てられない。変な人間に拾われたら人生が終了する。
「美香さん? ほらぁ、あなたのセクシーポーズですよぉ?」
そんなアホをぬかしてくれる宇宙人を前に、私はがっくりと床に膝をついた。
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