1 私は宇宙人を拾いました

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 人間、開き直ることしかできないことってあると思う。  聞けば、宇宙人の寿命はこれから十年とか。  毎年、春になったら風船をベランダから飛ばしまくるようだが、もうそんなことはどうでもいい。拾った奴も私と同じ目に遭えばいいのだ。 「お帰りなさいませ、ご主人様」  家に帰れば、私そっくりの人形がそう言って出迎える。  考えてみれば、餌代もかからないし、お喋り相手にはなるし、この宇宙人はペットよりもはるかに手間がかからない。 「聞いてよぉ。今日、店長がバイト時間増やしてもらえないかって言ってきたんだけど、それじゃ帰り、遅くなりすぎだよねぇ」 「そうですねぇ。帰りが遅くなるのは心配です。・・・だけど、店長ってこの間、帰りが遅くなったからってここまで送って来てくれた人でしたよね?」 「そうそう。・・・だって今までも遅くなったら送って来てくれてたのに、それって悪いし、だけど・・・」  家族には照れくさくて言えないことも、宇宙人には相談できる。 「美香さんって、ホント馬鹿ですよねぇ。その店長さん、美香さんを送っていく理由をつける為に、延長って言い出しただけじゃないですか。・・・ふふ、彼、美香さんに完全に気がありますよ。この間、人形のフリしていた私を、物欲しそうに見てましたもん」 「ばっ、・・・ばっかっ」  真っ赤になった私に、私の姿をした宇宙人はくすくすと笑ってみせる。  ああ、宇宙人の恋愛観はどうなっているのだろう。  けれどもこんな日々を、実はちょっと気に入っている自分がいる。 「うふふふ。何なら店長さんに私をプレゼントしたらどうですか? 『私だと思って』とか言って」 「ばっ、この馬鹿宇宙人―っ」  きっとこんな会話を誰かに聞かれでもしたら、一人芝居でもやっていると思われるのだろう。  壁が厚くて良かったとは思うけれど。   (なんか憎めないのよねぇ)  自分の姿をしているからなのだろうか。それともタンポポのように、いつも明るい性格だからだろうか。  こうして私と宇宙人は今日も一緒に暮らしている。
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