第1話 迷惑なルームメイト

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「なあ、比奈木。トンネル効果(※1)で犯罪が出来ると思うか?」  光瀬が、携帯の画面を眺めながら唐突に訊いてきた。僕はそんな光瀬の質問をぼんやり聞きながら、じっと彼の目の前のカップラーメンを見ていた。  もうお湯を注がれて随分たっている。きっと中の乾麺はふやけてしまっているだろう。けれど、食べごろを教えてあげるほど僕はお人よしではない。実のところ、腹も立っている。 「なあ、比奈木ってば。トンネル効果で犯罪を解決出来ると思うか?」  質問が180度変わってしまったようだが気のせいか?  光瀬は少し猫っぽい大きな目をじっとこちらに向けてくる。ああ、また始まった。訳の分からない量子力学系問答コーナーが。  僕は二人でシェアして使っている2Kのアパートの自室の天井を仰ぎ、気付かれないようにため息をついた。 (※1)トンネル効果 量子力学の分野で、古典力学的には越えることのできないはずの障壁を、素粒子(電子)が一定の確率で通り抜けている様に見える現象。
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