最終章 魔法にサヨナラ(*ここが最初のページです)

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「いってしまったのか?」 背後から、声が聞こえてきた。 「うん…………。それが魔法界のおきてなんだって」 わたしは振り返らずに、そのまま妖精ニャーモが消えた青い空を見ていた。 屋上の手すりを握る手が震えている。 後ろにいるあいつに気づかれなければいいけど。 「なあ…………本当によかったのか?」 「何が?」 わたしは、質問に質問で返す。 「何って…………いろいろ」 「うん。魔法なんてない。それが普通のことなんだから」 「…………そっか」 「きっとそうだよ」 「でもな、魔法なら俺にも使えるぞ」 「え…………?」 「あっ、振り向いたらだめだからな」 わたしは振り向こうとした動きを止める。 「あんたが魔法を使えるわけないじゃん! ただの不良高校生なんだから」 「そんなことはないぞ。その証拠に、今から、お前の目の前に真っ赤な薔薇の花束を出してやる」 「薔薇って…………」 「しかも、一本三百円もする薔薇が十七本だ」 「…………魔法なのに、お金がかかるんだ?」 「この魔法には金がいるんだよ。おかげで財布がすっからかんだ」 「ふふっ」 「あ、笑いやがったな。魔法使わないぞ」 怒った口調に、わたしは顔を引き締める。 「ごめんごめん。で、わたしはどうすればいいの?」 「…………そうだな。じゃあ、三つ数えて、ゆっくり振り向いてくれ」 「うん」 わたしは深く息を吸い込んだ。 「さーん…………にーっ…………いーち!」 そう言って、ゆっくりと振り向く。 目の前に、真っ赤な薔薇の花束を持った竜司が立っていた。 END
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