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拝啓、勇敢なる兵士へ
どうか私の言葉を讃えておくれ
世界の果てまで腐り落ちても
友の眼が死骸に成り果てようとも
私はここで待っています
貴方が報われるその日まで
『西暦』。その言葉も無くなった遠い未来。星は全世界に平等に降り注ぐ。
その世界にただ一つの古びた映画館。私の仕事はこの映画館の床を掃くこと。ピカピカに光っているこの床を掃除すること。
昔は賑わいを見せたこの町も今では子どもの笑い声すら聞こえない。
数十年前に出会った冒険家は「西へ行く」と言い残し、コーラの瓶を片手に旅立っていった。
いつものように箒でほこりを取り、水に濡れたモップで床を拭く。ポップコーンを作る機械の手入れが終わったら私の時間。お気に入りの席、最前列から少し後ろに下がった真ん中二つ右の席に座ってぼんやりと前を見ている。
私の姿が映画の中に溶けていく。タイトル「私」の無声映画は淡々と繰り返される。冒頭シーンはフィルムが掠れて消えている。明確に覚えているのは温かな手に撫でられた頭。笑顔で箒を握るワンピースを着た私。
上映時間「20005年」の結末はいつも同じ。古びた映画館の床を掃く私。孤独で孤高な上映会は今日もポップコーン一つ無く終わった。
古びた映画館に残された唯一の動体。私は、今日も働いている。冒頭シーンを見るまでは。冒頭シーンが流れるまでは。
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