前を向いたらベルが鳴る

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一度、質問したことがある。探検家と名乗り、冒険家と名乗り、軍人と名乗ったあの人に。 「東には行かれないのですか?」 軍人さんはラム酒を飲んでから赤い顔で陽気に言った。「東は暑いから。」 冒険家さんは私に微笑みながら言った。「東は寒いから。」 探検家さんは少し寂しそうな顔をして私に言った。「東には行きたくないんだ。」 そして、あの人はこう言葉を付け足す。 「それに、あそこには兵士がいるから。愛する娘を守る兵士さんが。」 あの人はコーラ瓶を片手に私の下から去っていく。違う人になるために。違う思い出を塗るために。 無声映画の冒頭シーンはもう存在しない。タイトル「私」の残りフィルムもあと僅かだ。結末はいつも同じ。この映画館の床を掃くこと。ポップコーンの機械の手入れは完了した。 その日、私は、何かを思った。それは今までの私と違った。私の行動範囲に含まれていなかった行為を私は思いついた。 上映時間「50000年」まであと数時間。エンドロールを見れないだろう私は、そのエンドロールが見たくなった。 その足はフィルム室へ。止まった映写機に巻かれたフィルムには私に見えるようにメッセージが書かれていた。 『一緒に東へ行こう』 「ただいま。」 兵士さんは私に微笑みかける。タイトル「私」の無声映画に唯一記録された音は短いエンドロールになって私のプログラムに溶け込んだ。 点滅する私の光が消え、目と意識がシャットダウンされるまであと十秒。 せめて、勇敢な兵士さんの手に触れたいと、私は彼へ寄り添った。 彼の笑顔は私に
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