第7章

11/14
前へ
/935ページ
次へ
「そこは、もう『ボーダー越え』だぜ、シブサワ。ない、それはない」  キッパリとそう言い返すと、室田は、手にしたタバコを灰皿に押しつぶす。  澁澤が、そんな室田へとふわり視線を向けた。  そしてキャメルの箱を、ツッと室田の方へと滑らせる。  室田は、無言のまま、中指でボックスを引き寄せると、蓋を開けて一本引き抜く。  それからまた、指を伸ばして、テーブルの上に置かれた澁澤のジッポーを取った。  チンと微かな金属音の後、ダイアルを回す乾いた音と共に、室田の手の内で炎が揺らめく。    「……で、話ってなんだよ、澁澤」  そう言うと、室田は、炎ごしに澁澤を見つめてから、ジッポーの蓋を、カチンと閉じた。
/935ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2745人が本棚に入れています
本棚に追加