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「そこは、もう『ボーダー越え』だぜ、シブサワ。ない、それはない」
キッパリとそう言い返すと、室田は、手にしたタバコを灰皿に押しつぶす。
澁澤が、そんな室田へとふわり視線を向けた。
そしてキャメルの箱を、ツッと室田の方へと滑らせる。
室田は、無言のまま、中指でボックスを引き寄せると、蓋を開けて一本引き抜く。
それからまた、指を伸ばして、テーブルの上に置かれた澁澤のジッポーを取った。
チンと微かな金属音の後、ダイアルを回す乾いた音と共に、室田の手の内で炎が揺らめく。
「……で、話ってなんだよ、澁澤」
そう言うと、室田は、炎ごしに澁澤を見つめてから、ジッポーの蓋を、カチンと閉じた。
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