第7章

12/14
前へ
/935ページ
次へ
5 「え? 劉山会だって?」  二本目のキャメルを、フィルターギリギリまで吸い終わった室田が顔を顰めた。  だが、そのしかめっ面は、澁澤の問いに対するものでは、おそらくなくて。  もう一本、もらいタバコをするかしないか、その逡巡が表情を険しくさせていただけのことのようだった。   「なんでそんなこと、今さら知りたいんだ? 澁澤」  室田が腕組みをして、トントンと人差し指で自分の前腕部を叩く。  澁澤は、ただ黙ってテーブルのキャメルのボックスを引き寄せた。  そして、一本振り出すと咥え、ジッポーのダイアルを摺る。  タバコの先に火を回して、ライターの蓋を閉め、深々と、「新鮮な」一服目を吸い込んだ。  チッと小さく、室田が舌打ちをし、人差し指を出して、軽く何度か曲げ伸ばしをして見せる。  澁澤は微笑して、手にしたタバコの箱を投げた。  慌てて腕組みを解き、それを受け取った室田へと、すかさず続けて、オイルライターが飛んでくる。   「しかし、そんなこと古巣(ソタイ)に訊きゃあいいだろ?」  と言ってタバコを咥えたところで、室田がふと、指を止めた。   「ま、さすがに、そりゃ、訊きにくいってか……」  すると澁澤が、フイと目を細める。  まるで、タバコの煙を避けてみせたとでもいうかのように――
/935ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2744人が本棚に入れています
本棚に追加