第2章

3/12
前へ
/935ページ
次へ
 監視モードでモニターのスイッチを入れた。  と、カメラのレンズを真っ直ぐに見上げている男の顔が、モニターに大写しになる。  見覚えのある男だった。  というか……。  少し前に、一度、ここに『持ち帰った』ことがある。  警視庁の「刑事」だとかいうオッサンだった。  あの夜は、嵐のような雨が降っていた――  よお、と、とぼけた声で、男が言う。  まるで、モニターのスイッチが入ったのが、ちょうど解ったとでもいうようなタイミングで。  虚を突かれてしまい、僕は思わず「え……なんでっ」と声を上げてしまった。  男が、クスリと含み笑いを洩らす。  こっちの音声は、向こうのスピーカーには流れていないはずなのに―― 「ったく、なんだよオッサン、いきなり。こんな時間に」  僕は通話ボタンをオンにして、マイクに向かって噛みついた。
/935ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2743人が本棚に入れています
本棚に追加