部屋とYシャツと冬休み――プロローグだけどエピローグ

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()るか? お前も」  あっという間にグラスを空にして、澁澤が僕に訊いた。  正直、バーボンはあまり好みじゃない。  けど、窓の外の木枯らしの音は寒々と甲高くて、気持ちも凍えさせるようなありさまだったから、僕はすかさず、澁澤に頷いてみせた。  澁澤が、空のグラスにまた、なみなみとバーボンを注ぎ入れる。  僕は手を伸ばした。  だが、澁澤はグラスを僕には手渡さず、また自分で口を付ける。  溜息をついて、僕は肩をすくめてみせた。  次の瞬間、僕は二の腕を掴まれ、澁澤の方へと強く引き寄せられる。  顔が澁澤のワイシャツの胸元に、勢いよくぶつかった。  シャツのすべらかな布地の下、澁澤の胸板のかたい筋肉と温もりを頬で感じ取る。  顎を掴まれ、やや強引に口を開かされながら、僕は澁澤のキスを受け入れた。  口腔に流し込まれたバーボンは、うっすらとぬるい。  それを飲み下した直後、僕の口と喉は焼けるように燃え上がった。  その間も、超絶技巧の澁澤のくちづけが続く。  息を継ぐたびに、僕はせつなく吐息を洩らし、澁澤が低い呻き声を上げた。
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