部屋とYシャツと冬休み――プロローグだけどエピローグ

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 セーターの中へと澁澤の手が入り込んでくる。  胸の頂きを弄られ、じくじくとした快感を覚えながらも、服がまくれ上がって空気に触れている腹や肋骨周りに感じる冷気に、僕は鳥肌を立てずにはいられない。  くちづけの途切れ目を捉え、僕は訊ねた。 「……で? 何時までに戻らなきゃならないんだい、庁舎には?」  澁澤が、鋭く舌打ちをして黙り込む。 「そんなのすぐ解るに決まってるさ、澁澤。こんなせっかちな真似して」 「六時半から、管理官と打ち合わせだ」  そう? だったら、五時には机に戻ってなきゃってところだな。  僕は胸の内で、こうつぶやいた。  すると、澁澤がボソリと言う。 「どうだ、さっさと()られたいか? それともゆっくりして欲しいか?」 「何だい、その二択?」  僕は、思わず噴き出した。そしてすかさず、澁澤に足払いを掛ける。  澁澤は積み木が崩れるように、ドサリと背中からソファーへと倒れ込んだ。 「で、澁澤。君、『さっさと犯られたい』? それとも、『ゆっくり抱いて欲しい』?」  澁澤の両手と両足をソファーに止めつけるようにして覆いかぶさり。  その耳もとで、僕は囁いてやった。
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