第3章

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3  バスローブの腰ひもがベルトループから、するりと滑り落ちた。  しどけなくローブをはだけて、半ば裸のような姿のまま、僕はソファーの上のジャケットに手を伸ばす。  ポケットに入れる指がもつれて、スマートフォンの上を、何度も滑った。  それでも、やっとのことで取り出して画面を見ると、非通知の番号からの着信だった。  澁澤だと、すぐにそう思った。  画面をスワイプして、スマートフォンを耳に押し当てる。  相手は名のらない。    僕は、すぐにしびれを切らして、「……しぶさわ?」と問い掛けた。   「そうなんだろ? オッサン、なんとか言えよ」  だが答えはなかった。 「ねえ、澁澤、これから来て……すぐ、きてよ」  僕のくちびるが、勝手に動く。 「我慢できないんだ、どうしても、もう……イキたいのに、すごくイキたいのに……」  ああ! このオッサンは、呼びもしない時には勝手に押しかけてきて、さんざ、ねちっこいセックスをした挙句に、僕のベッドでタバコを吸っていくくせに。 「なんで……なんで、欲しい時に来ないんだよ? ねえ、してよ、して……」  そうやって、得体のしれない繰り言を発しながらも、僕の手は激しく下腹部を擦り上げ、もう片方の手の指先は、胸の尖りを舐り続ける。  少しずつではあったが、ジワジワと快感が累積していた。 「欲しい、澁澤……キスして、吸って、擦って……」  ……挿れて。 「挿れたい……ほしい、いやだ、澁澤、はやく、来て、はやくきてったら」  ゾクリと、腰骨に旋律が走る。
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