第3章

10/15
前へ
/935ページ
次へ
  「おいおい、なんだ?」  いつも厚かましくも空とぼけたようで癪に障る態度の澁澤が、めずらしくも面喰った声を上げた。  その声ごと、澁澤のくちびるをキスでむしり取る。  肉汁の滴る骨付き肉にむしゃぶりつくようにして、貪って、舌を絡めとり、くちびるに噛みついた。  ざらりと、髭の伸び始めてきた澁澤の頬を撫で、耳朶をいたぶり、肩を撫で下ろして腰へと指を滑らせて、ヒップを掴む。  そんなキスの途切れ目に、澁澤が僕の目を覗き込んだ。  そして、「……めずらしいのな? お前が、こんな『さかりがついた』みたいなのは」と、軽口を叩いてみせた。  歳相応だろ? とか、そんな風に応じてやったかもしれない、いつもなら――  だが、僕は何も言わずに、また澁澤に口づける。  どうしようもなく熱く疼く下腹部を、澁澤の脚に擦り付けながら、荒くなっていく息遣いも抑えぬままに。  ――考えまいと、そう思いながらも。  昨日の夜から、あの電話が切れてからずっと。    胸の内にもやついてザワつくものを、言ってしまえば、ゾッとさせられる恐怖じみた何かを、忘れたくて。そして、ダラダラと続く陰部の疼きが止まらなくて。  僕は身体ごと、僕のすべてを澁澤に押しあてて、激しく摩擦した。
/935ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2743人が本棚に入れています
本棚に追加