第3章

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 澁澤が、そうやって低く囁く間も、僕の指先は動きを止めずに、澁澤の下腹部を解放させていた。  トランクスの裾から指先を入れて、僕は澁澤の塊を、ギュっと掴む。 「はやく……もっと、もっと、かたく、かたくして、しぶさわ、もっと」  もはや何を考えるでもなく、くちびるは勝手に動く。 「そんなに急かすなって」  溜息交じりのように呟くと、澁澤が、僕の猛りを長い指で包んで擦った。  昨夜から、ずっと渇望していた、他人の手のぬくもり。  それを感じ取り、僕は、短く息を飲むと、反射的に達していた。   「お前……早すぎるだろう?」    からかいながら、僕の吐き出したとろみを帯びた澁澤の指は、後ろへと滑っていく。  そこに白濁を塗り込めるように愛撫する指先は、いつもよりどこか性急で。  僕の放出に、澁澤の欲望も、かなり刺激されているのが、はっきりと解った。  だから、僕は半ば必死に、澁澤にしがみつく。  片方の膝裏に澁澤の腕が通されて、腿がグッと上に引き上げられた。  猛る部分が澁澤の腹筋にきつく密着し、僕はせつなく啼く。  そして、澁澤の熱が押し当てられた。  早く、早く割り入って欲しくて。  僕のその場所は、それを貪欲に受け止める。 「……弄ってたのか? もう、随分、解れてるな」  セックスの時には、どちらかと言えば無口な澁澤の舌は、今晩、やけに滑りが良い。  僕はただ、「ああ、もっと、きて、もっと……奥」と、うわ言を繰り返す。  ごく唐突に、澁澤が僕を、深く穿った。  口をついて出る嬌声をこらえる気もなく、僕は半ば歓喜の、半ば必死の悲鳴を上げる。    澁澤は、僕の腰をしっかりと抱え、立ったまま犯し続けていた。  自分の内襞が、澁澤に淫らにまとわりついているのを感じながら、僕は、「いい? しぶさわ、ねえ、いい? なか、きもちいい?」と訊ねて顎を上げ、澁澤の耳朶に舌を這わせる。  澁澤が、小さく息を飲む声。  そしてすぐに、僕の背中は、壁にドンと押し当てられた。  抽挿の振り幅は、すぐに激しく強く、歯止めがきかない様子にまで高まった。  澁澤が短く、鼻にかかった呻き声を上げる。  ああ、来る――  そう思った刹那、澁澤の熱が、僕の奥の奥で爆ぜた。
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