第3章

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「『電話』が掛かって来たとかって、言ってたろう……誰からだったか、そんなに気になるのか?」  「別に」と、吐き捨てるように応じた自分の声が、ひどく頼りなく、夜に響いた。 「調べてやろうか?」    言って澁澤が、クスリと笑う。  僕は、ただ黙って寝返りを打った。 「なるほど? 『心当たりはある』って感じだな、その様子だと」  澁澤が二本目を咥えて、ジッポーの蓋を開けた。 「うるさいな」 「え?」 「うるさい、って言ったんだ」  僕は鋭く言い返す。 「っていうか、二本目吸う気なら、もう帰れよな、オッサン」 「……おいおい、なんだよ、その変わり身の速さはよ」  怒るというよりは、むしろ面白がるような口調で、澁澤が言う。 「まったく、とんだ『気まぐれ仔猫ちゃん』だな」  「仔猫ちゃん」には、さすがにカチンときた。  僕は振り返って、澁澤を睨む。  そして、「あんたはとんだ『ひょうたんなまず』だよ」と言い返してやると、澁澤が、ブッと吹き出した。
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