第4章

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 だけど、バスローブの合わせ目から触れる澁澤の腰の、その部分が、スラックス越しにでも、はっきりと分るほどに熱っぽく隆起しているのを感じとって、僕の胸の尖りが、ジンと甘く痺れた。  と、澁澤は、僕の心を読んだかのように、 「昨日から、お前、ホント、イヤらしく『サカって』るからな、俺もつられっちまって、しょうがないってことだ」と囁いて、するりと、僕から身体を離した。  ジャケットの袖に腕を滑らせながら、大股で歩みゆく澁澤が寝室を出ていく。  馬鹿みたいにぼんやりと、そんな後姿を見つめてしまっている自分と、部屋に立ち込めているタバコの匂いに気がついて、僕は慌てて踵を返すと、部屋の窓を開け放った。  ふと、遠くでカチャリと、おかしな音がした。  いや、別に、「おかしく」はない。  あれは、玄関の鍵が開く音だ――  澁澤が出ていったのだろう。  ――出ていって?  違う。  あれは鍵を挿しこんで、「外から」錠を開けた音だ……!  一瞬にして、そうひらめいた、その直後。  玄関のスチールドアが、バタンと重く閉まる音が、部屋に響き渡った。
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