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「美憂、いいの?」 二人分の下駄の音が、静かな歩道に鳴り響く。 「いいの」 口では明るく、何でもないように言いながらも、若干声が震えていたように感じた。 「………こんなことくらいじゃ……槙さんは、何も思わないよね…」 どんな言葉をかけてあげればいいのかわからなくて、黙り込む私に、困ったかのような笑顔を向ける。 「……恋って、難しいね」 「……美憂……何かあった時は、相談してね?……私は美憂の味方だからね?」 「ありがとう、詩花」 ーーーアパートの階段をひとつ、ひとつ、ゆっくりと登る。登り切ったところで、部屋の前にある人影にビクリとした。 私の足音に気付いたのか、ゆっくりと顔を上げてこちらを見る。 「………おかえり。しい」
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