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「……え」 行くことになったというわりには、再び腰を下ろして、全然動こうとしない。 今の電話の様子だと、緊急な気もするけれど……。 「向坂さんが、風邪で早退したって。代わりに俺に白羽の矢が立っちゃったんすよね。何でよりによって今日に立つかな~」 「……そっか。それなら、早く行ってあげないと大変なんじゃないの?」 単純に心配して言ったつもり。 なのに佑くんは、ものすごく残念な顔を向けて 「俺、今日のデートすっげぇ楽しみにしてたんすよ!?夜はこれから!って時だったのに…!」 少し聞き捨てならない部分があったかのように思えたけれど、敢えてスルーしておいた。 私は立ち上がると、佑くんの腕を引っ張って重い腰を上げさせる。 「……デートなら、またやり直せるでしょ」 クルっと方向転換をして、駅までの道を先に一人歩き出す。後ろから「美憂さーん!」なんて声が追いかけてくる。
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