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お店の最寄り駅で佑くんと別れると 「美憂さん、今日はすいません」 「ううん、気にしないで」 手を振って、にっこり微笑む。 「………意外と楽しかったよ」 「え!」 「じゃあね。仕事頑張って」 私は佑くんに背を向けると、そのまま歩き出した。 ーーー*** 俺は美憂さんに名残惜しそうに手を振ると、人混みに紛れていくその背中を、じっと眺めていた。 「……行くか」 くるりと方向転換をして、店までの道を歩いて行く。駅からそう遠くない場所にあるため、すぐに着いてしまう。 裏口から店に入り、更衣室で着替えを済ます。ロッカーの鏡に映る俺の顔は、さっきまでのデートの名残のニヤけた顔と、本当なら今も一緒にいたはずの残念そうな顔の二つが混ざった、何とも複雑な顔をしていた。 「………うっし!」 軽く気合いを入れて、厨房へと向かう。
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