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「………じゃあ、もうひとつ聞いてもいいっすか?」 「………どうぞ」 盛り付け終えた小鉢を冷蔵庫へと入れて、また新しい器を並べ始める。 一切無駄のない仕草に、負けたくないという想いが湧き上がる。 「今日の電話は、わざと邪魔したわけじゃないすよね?」 本人は無意識なんだろうけど、微かに手が止まる。 少しずつ気持ちが変化していることを、槙さんは気付いていないんだろうな。 俺はこういうことにだけは、やたら敏感で、槙さんが誰を見ているのか、とっくに気付いていた。それを辛そうに眺める美憂さんの気持ちも。 …………知りたくなんか、なかったけれど。 「……邪魔なんか、するわけないだろ」 「……ですよね。一応確認っす」 ヘラっと笑って、また作業に戻る。 ピーラーで人参の皮を剥きながら、槙さんに御礼を述べる。
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