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ーーー次の日。 スタジオに入ってすぐに、奏の元へと向かう。 「奏」 俺の呼びかけに、待ってました。と言わんばかりに立ち上がる。 ポン……と肩に手を置くと、耳元でコソッと囁く。 「事情は説明しておいた。納得もしてたよ。……ただ、お前が来ると思ってた分、ショックだったとは思う。本人は何も言わないけどね」 詩花の悲しそうな表情が思い浮かんで、やるせない気持ちになる。 「………これは、あくまで想像だけど……俺らが帰った後、一人泣いてたんじゃないかな」 その様子が安易に想像できた。 詩花の悪い癖。平気な振りして、一人でこっそり泣いてる姿を、これまでに何度も見てきた。 その度に、俺は詩花を抱きしめて少しでも軽くなるように、不安を取り除いてやる。 けれど、今は駆け寄って抱きしめてやることはもちろん、連絡すら取ってやれない状況。
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