7

20/30
前へ
/456ページ
次へ
背を向けて、今来た道を戻る。 フンフン~と鼻唄でも歌いたい気分。 ずっと好きだった人に想いが通じた瞬間というのは、こんなにも幸せなのかと思う。 「今なら何でも出来そうだな……」 きっと、槙さんのことを好きじゃなくなったわけではないことくらい、わかっている。 忘れるために、俺と付き合ってくれたのかもしれない。 それでも、いつかオレだけを好きになってくれる、オレだけを見てくれるんだと、そう思っていた。 ーーーーー・・・ なんだか、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて、槙さんのお店を出た後、いつものマンションへ足が勝手に向かう。 余計なことをしたかもしれない。 だけど、勝手に身体が動いてしまった。 「美憂にバレたら……怒られるだろーな……」 部屋の鍵を開けて、中に入る。 ここに来るのも久し振りで、たまに掃除をしに来る程度。 リビングのソファに腰を下ろす。 横に置いてあるクッションを胸に抱いて、目を瞑る。 最近、仕事も忙しく疲れていたせいか、そのままいつの間に寝てしまっていた。 鍵を開ける音に続いて、玄関のドアを開ける音、バタバタとリビングに向かってくる足音に、目が覚める。 「……っ……しい?」 リビングのドアが開いたと同時に、ソファに寝ていた私の元へとハルが駆け寄って、ギュ、と抱きしめられた。
/456ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2076人が本棚に入れています
本棚に追加