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背を向けて、今来た道を戻る。
フンフン~と鼻唄でも歌いたい気分。
ずっと好きだった人に想いが通じた瞬間というのは、こんなにも幸せなのかと思う。
「今なら何でも出来そうだな……」
きっと、槙さんのことを好きじゃなくなったわけではないことくらい、わかっている。
忘れるために、俺と付き合ってくれたのかもしれない。
それでも、いつかオレだけを好きになってくれる、オレだけを見てくれるんだと、そう思っていた。
ーーーーー・・・
なんだか、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて、槙さんのお店を出た後、いつものマンションへ足が勝手に向かう。
余計なことをしたかもしれない。
だけど、勝手に身体が動いてしまった。
「美憂にバレたら……怒られるだろーな……」
部屋の鍵を開けて、中に入る。
ここに来るのも久し振りで、たまに掃除をしに来る程度。
リビングのソファに腰を下ろす。
横に置いてあるクッションを胸に抱いて、目を瞑る。
最近、仕事も忙しく疲れていたせいか、そのままいつの間に寝てしまっていた。
鍵を開ける音に続いて、玄関のドアを開ける音、バタバタとリビングに向かってくる足音に、目が覚める。
「……っ……しい?」
リビングのドアが開いたと同時に、ソファに寝ていた私の元へとハルが駆け寄って、ギュ、と抱きしめられた。
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