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ーーー美憂side
「………槙さんも馬鹿だね」
「あ?」
「無理してるくせに」
「なんの話だよ?」
「……詩花のこと、好きなくせに」
ほんの一瞬、僅かに顔から笑みが消える。
けれど、すぐにいつもの営業スマイルを浮かべた。
「美憂。面白んねぇ冗談じゃ笑えねぇよ」
「冗談かどうかは、自分が一番わかってるくせに」
アルコールのせいで、少しだけ大胆になってる部分もある。意地悪をして話を振ったのは私だけど、平気なフリして笑っている槙さんを見ていると、イライラする。
いつも優しい目で詩花を見つめるくせに、彼氏の話題になると、一瞬だけ切ない目をする。
私は、それを見るたびに、胸がギュっと押しつぶされそうになる。
はあ……と、大きく息を吐くと
「……詩花が笑ってるなら、俺はそれでいいんだよ。奪いたいとか、そんな事を思ってるわけじゃない」
「そんなわけないでしょ。好きなら、自分のものにしたいと思うのが、普通じゃないの?」
いつになく、真面目な顔で私を見る。
いや、どちらかといえば、少し怒っていると言った方がいいのかもしれない。
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